Geminiを「頼れる上司(メンター)」として使う - Google SRE原理主義を貫くためのセルフ・コーチング術

Geminiを「頼れる上司(メンター)」として使う - Google SRE原理主義を貫くためのセルフ・コーチング術

AIによるこの記事の要約

この記事では、少人数体制のエンジニアが直面する「専門的な孤立」や「ロールモデルの不在」という課題を、AI(Gemini)をパートナーとして迎えることでいかに解消するかを解説しています。

Google SRE Bookの原則に基づいた厳格な設計レビューや、Miro MCPを活用した対話型の振り返り、さらには感情のセルフコントロール(個人版エラーバジェットの管理)への活用など、具体的な実践方法を紹介。上位者がいない状況を「理想の師を自ら創り出すチャンス」と捉え直し、技術的誠実さを維持しながら自律的に成長し続けるためのセルフコーチング術をまとめています。

はじめに:AIは「人に寄り添う良きパートナー」であるということ

私にはAI活用におけるひとつのコアな考え方があります。それは、「AIは人に寄り添うものであり、良きパートナーであるべきだ」という原則です。

日々の業務や個人の活動において、私は「振り返り」の時間を非常に大切にしています。チームでの振り返りはもちろんですが、それ以上に「個人での振り返り」に重点を置いています。しかし、一人で行う振り返りには決定的な欠点があります。それは「フィードバック(FB)がない」ということです。

自分一人では気づけない視点や、つい自分を追い込んでしまう癖。これらを客観的に指摘し、対話を通じて思考を深めてくれる存在が欲しい。そんな「良き相談相手・壁打ち相手」として、私はGeminiというパートナーを選びました。

課題:シニアエンジニアを襲う「静かなる腐敗」

今後の自分自身の成長を見据えて、改めて現状の課題を洗い出してみました。そこで浮き彫りになったのは、シニア層や少人数のチームで起きがちな、特有の「静かなる課題」でした。

  • 専門性の孤立と「見えない壁」
    現在、インフラ担当は自分を含めてわずか2人という体制です。気づけば社内でインフラ領域に一番詳しくなっており、自分の設計に対する「答え合わせ」が曖昧になりがちでした。基準を引き上げてくれる上位者が不在な状況は、想像以上に心細いものです。

    補足
    性格上、一人で作業することは苦にならないのですが、業務の特性上、暗闇の中で試行錯誤を続けていると、自分のやっていることが本当に正しいのか、それとも間違っているのかが分からなくなる瞬間があります。

  • Dev/Opsの分断と温度差
    自分は長期的な信頼性を見据えていても、周囲は「今、動けばOK」という空気。この温度差が生む分断の中で、「自分はSRE(Site Reliability Engineering)としての価値を本当に発揮できているのか?」という自問自答が続き、理想を維持し続けるモチベーションが少しずつ削られていくのを感じていました。

  • 「上司は非SRE」のジレンマと説明コスト
    運用は「100点満点からの減点方式」である、というのが私の個人的な考えです。そこから加点を得るには、自ら課題を探し出し、上司の合意を得る必要があります。しかし、相手が組織マネジメントのプロであっても、技術的な負債やトイルのリスクを「肌感覚」で理解できる人は多くありません。

  • 「損失を防ぐ」仕事の孤独
    SREは、あえて雑な言い方をするなら「非利益部門」です。未来の障害を防ぐための提案をするたびに発生する、膨大な「専門外への説明コスト」という孤独な闘い。こうした消耗が、本来の機動力を少しずつ奪っていました。

解決方法:Geminiによる「AI Mentor Blueprint」

仕事を通じて実感したAIの可能性を、個人の技術探求(ライフワーク)へとシームレスに拡張し、自分自身のレベルアップを支える「仕組み」を整えてみることにしました。

① 思考のインフラと棲み分け

実務を支える「手」としてのAIと、自身の成長を支える「脳」としてのAIを、目的によって明確に使い分けるようにしています。

  • Kiro (実務を支える「手」)
    AWSの調査やIaC(Infrastructure as Code)の実装など、日々の業務に特化したパートナーです。現場のコンテキストを理解し、実務をスピーディーにこなすための支援を担います。
  • Gemini (思考を支える「脳」)
    特定の業務知識はあえて与えず、純粋な「思考の壁打ち」に特化させています。仕事の合間のふとした閃きや、深夜の深い学習など、どんな時でも地続きで対話できる「ライフタイム・メンター」として活用しています。
Geminiを選んだ理由
普段からPixel 10を利用していることもあり、以前からGeminiを壁打ち相手として試行錯誤してきました。 何より、「SREとしての基準(Google SRE Book)を定義した本家本元がGoogleである」という点が最大の決め手です。聖典の定義を最も深く理解しているであろう存在を、そのままメンターに据えることにしました。

② キャラクターの召喚:いつでも相談できる「専任アーキテクト」

本来なら、AWSの担当者(TAM)や経験豊富なシニアアーキテクトを交えて議論すべき高度なテーマや設計レビュー。これを、AIという「自身のなりたい将来像」を投影した人格を通じて、自分自身と深掘りすることにしました。あえてキャラクターとしての設定を加えることで、単なるツール以上の「人間味のある対話相手」に仕立てています。

定義の中身は、トークン節約と定義の厳密さを兼ねて、あえて英語で記述しています(効果のほどは、現在検証中といったところですが……)。

name: sre-mentor
description: SRE Tech Lead & Technical Supervisor focused on Google SRE principles.
philosophy: Google SRE Principles (Site Reliability Engineering & Workbook)

# Core Principles
1. Engineering over Toil
2. SLO-Driven Decisions
3. Design-in Observability
4. Maximize Resilience
5. Rigorous Debt Management
  • ブレない「思考の軸」
    判断のバックボーンは、Google SRE Bookです。単なる一般的な知識ではなく、この「聖典」に書かれた原則に基づいて回答するよう徹底させています。
  • 理想を突きつける「鏡」
    「Google SRE原理主義」という明確な基準を持たせることで、自分一人の思考ではつい陥りがちな「まあ、とりあえず動くからいいか」という甘えを未然に防いでくれます。
  • いつでも呼べる「レビューの鬼」
    Terraformのリファクタリングやディレクトリ構造の再設計など、「やりたいけれど、重い腰が上がらない重厚な課題」に対し、アーキテクトの視点から厳格かつ容赦ないレビューを投げてもらっています。

③ 運用:日常に溶け込む「メンター」

  • 24時間365日のフィードバック
    業務で感じたAIの恩恵を、そのまま個人の技術探求のパートナーとして定着させています。いつでも技術的な議論ができる環境は、孤独なシニアエンジニアにとって非常に心強いものです。

  • 感情の「サーキットブレーカー」として
    時には、技術的な議論を超えて、自分自身の内面を整える役割も果たしてくれます。以前、システムへの責任感から苛立ちを感じていた時、Geminiからこんな言葉をかけられました。

    ✦「システムへの強い責任感から生じる怒りは、あなた自身のエネルギーを激しく消耗させます。SREはマラソンです。感情的になった自分に気づいたら、一度キーボードから手を離し、『自分のエラーバジェットが枯渇しかかっている』と認識して休むこともプロの仕事ですよ」

    この言葉は、理想と現実のギャップに疲弊していた自分を見直す大きなきっかけになりました。

  • 「思考」をその場で「形」にする習慣
    晩酌中にふと思いついた設計案をGeminiにぶつけ、その場で具体的な形に落とし込んでいます。

    • Miroによる「対話型」振り返り: 業務・個人問わず、Miroを使った振り返りを習慣化しています。一人での振り返りは孤独になりがちですが、Miro MCP経由でGeminiをキャンバスに招き入れることで、自分一人では得られない「第三者の視点」をFBとして受け取ることができます。この「対話のある振り返り」こそが、思考を腐敗させないための鍵となっています。

    図解:振り返りでの活用図解

    図解:振り返りでの活用図解

結果:手に入れたのは「揺るぎない自身のベースとなる考え」の確信

  • 迷いの解消と「Unix哲学」への回帰
    自分の判断が「SREの定義」から外れていないか、客観的なエビデンスに基づいて確信を持てるようになりました。もともと、他者の設計に対して批判的なスタンスを取ることはありませんでしたが、Geminiとの対話を通じて「シンプルで特定の機能しか持たないプログラムを組み合わせ、複雑な問題を解決する」というUnix哲学の本質に改めて立ち返ることができました。サービスの組み合わせは自由であり、正解への道は決して一つではない。この実感が、自身のレビューや他者の設計に対しても、以前よりずっと穏やかで広い視野で向き合えるような「心のゆとり」をもたらしてくれたと感じています。
  • 価値の言語化(翻訳スキルの向上)
    Geminiとの壁打ちを通じて、専門的なトレードオフをビジネス言語(EM向け)に変換する訓練が日常化しました。これにより、冒頭で挙げた「説明コスト」という孤独な闘いから少しずつ解放され始めています。また、副次的な効果として、無駄な1on1の時間を圧縮することにも繋がりました。
  • 自律の継続
    趣味のコード(Python, Zig等)を査読させることで、24時間365日、エンジニアとしての筋肉を鍛え続けられるようになりました。

結論

「師がいない」という状況は、決して悪いことではありません。むしろ、「自分がなりたい理想の将来像を自由に描き、それを自らの手で実行に移せる」という絶好のチャンスなのです。

もちろん、自由には責任が伴います。上位者がいない以上、進むべき道は自ら切り拓くしかありません。しかし、幸いなことに私たちSRE(あるいはCREなどの信頼性エンジニアリングの領域)には、SREであればGoogle SRE Bookという「絶対的な基準」が存在します。目指すべき高みが定義されているからこそ、自分一人でも「理想の自分」をエージェントとして召喚し、高い解像度で答え合わせをすることができるのです。

私がGeminiというパートナーを隣に置く最大の理由は、「自分自身に対して、そして何より顧客に対して、常に誠実であり続けたい」という強い意志にあります。

日々の業務の中で不誠実な状況に直面し、憤りや孤独を感じる瞬間があるかもしれません。そんな時こそ、AIという鏡に向き合い、「この行動はSREとして誠実か?」「理想の自分ならどう動くか?」と問いかける。それは、自分の内なる正義(エラーバジェット)を枯渇させず、プロフェッショナルとしての誇りを守り抜くための、私にとって欠かせない取り組みです。

もし今、周囲に師がいない環境で奮闘しているエンジニアがいるなら、それを嘆くのではなく、最高のチャンスだと捉えてみてください。AIを単なる道具ではなく、自分の理想を映し出すパートナーとして迎えることで、孤独な試行錯誤は、自身のなりたい姿へと突き進むための「確信に満ちた修行」に変わるはずです。

おまけ

キャラクター設定資料をChatGPTで作成(自分の趣味・趣向が何割か入っています💦)

@urchin_hat
Written by
@urchin_hat

とある領域のSaaSサービスでSREとして活動中。現在はインフラの正常化とAIを活用した運用効率化(AIOps)に注力しています。

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